サウダーヂな夜

ひとり旅の行方。

  • BID26|2016年09月12日


いつもの貧乏性にもなんとなく胸を張れるのが「青春18きっぷ」。

大体気が済んだら、途中で特急に乗り換えたりするから、結局のところ安くついているのかは謎だけど。本を読むために過ごしたり、夕暮れまでぼんやりと車窓を眺めながら一枚の音楽を聴いていると、気づけば、どこか空気の違うところへ運んでくれている。

そんな旅だから、どうせならドラマチックな偶然の出会いをしたいけど、やっぱり私は現代っ子でスマホを上手に使いこなしてしまうわけだ。「純喫茶」とか「ブルータス」とか「孤独のグルメ」とかでググってみれば、大抵熱いラインナップの検索結果が並ぶことをきちんと知っているし、そしたら、その手のブログを書いている人が必ず見つかる。だからある程度、旅の質は自分の中で保証されている。

まあそれでもやっぱり、旅は出会いだなんてよく言うもんで、計画通りの旅なんてほとんどない。そうやって調べてみても定休日の罠に引っかかったりして店の前で大げさに落ち込む。

ただ、途方に暮れているとなにかが新しいところへうまいこと導いてくれて、それはそれで案外いけてる。今回の旅は、その小気味良さが際立った。振り返ってみると、1日目の朝に起きた偶然が、それからの旅の全てを物語っている。

その日の朝は、ググって「ここだ」と決めた喫茶店でモーニングを済ませ、そこの奥さんに街の道案内をしてもらったものの、雨の中、すっかり気分が変わった私が逆の方角へ向かってぶらぶらしていると、大きな公園に突き当たった。そこで「公園の周りはお洒落」という私のセオリーに従い、近くを歩いていたお洒落なお兄さんの後をこっそりつけた。

途中で寄り道した私はそのお兄さんを見失ったけど、道の先には確かにお洒落な店が軒を連ねていて、自分の勘の良さにニヤっとなる。(その後、見失ったお兄さんが開店前のセレクトショップで自分の傘を拭いているのを見かけた。)

少しぶらぶらしてみると、自分が「12時の罠」に引っかかっていることに気がつき、でももう満足したし、戻ろうかなと思ったところに気になる喫茶店が目に入った。その佇まいは岡山にある少し寂しげな、とある喫茶店と似ている。とはいえ、珈琲もモーニングも済ませたばかりだったし、一度は通りすぎたものの、なぜかどうしても素通り出来なかった。

もうすぐ12時だし時間つぶしだ、とそんな気持ちでその喫茶店に入ることに。結果、2時間以上をそこで過ごしていた。次の予定もどうでもよくなった。

「ここであなたがお礼を言って帰るだけだったら、いつものことだったのに。帰り際のあなたの一言が一期一会だったのよ。」と白髪のハイカラな奥さんが、そう言ってくれたのが印象的で忘れられない。こういう時に、手紙を書きたいと思うんだろうな。

そこの奥さんと常連の男性の会話を聞いていると「夫婦はお互いの声が聞き取れなくなるの。」という映画のワンシーンを思い出した。映画のふたりは若い男女だったけど。

それから4日間の私は、なんだか弾みがついて、とてもテンポよく、人と出会い、乗り換えを間違え、忘れられない場所を見つけ、たくさんのお土産を抱えて帰ってきた。

旅のインスタントカメラを現像に出す。すると、喫茶店の奥さんも見せたかった場所も全部、写真には残っていなくて、私の記憶だけが旅の思い出となってしまった。それもうたかた、ひっそりと言葉で残そうと思います。

本当は、旅で起こった面白いことを1日の終わりにお喋りできる相手がいれば最高だけど。ひとりでいることを際立たせてくれる存在はきっと大切だと思う。

そんな旅の終わり。

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香具師 Profile

きり

サウダーヂな夜スタッフ

ひょんなことから毎週日曜日「サウダーヂな夜」の昼営業にて働くことになりました。城下をぶらぶらする際には、ぜひ私の話し相手になってください。もしくは面白い本もあるのでふらりと読書に寄っていただけたら。

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