サウダーヂな夜

やっぱり鶏のから揚げがいい。

  • BID24|2016年09月05日


秋は絶好のセンチメンタルでロマンチックな日和なので、旭川のそばに住んでいる私は、ふと思い立って河川敷を散歩した。水面がきらきらとしていいなあと、川面に近づき、まどろもうかなと思った瞬間、何か大きくて黒いものが私の足元を横切った。カニだった。よくみると、色んなところでカサカサしている。やつらは、サワガニみたいな可愛いフォルムとは到底かけ離れていて、どちらかというと海辺のフナムシを彷彿させる。気持ち悪い。

私の浮ついた乙女テンションはあっという間に平常運転に戻った。

ムードのある場所には、必ず自然界のトラップが潜んでいる。ロマンチックの大敵。悲鳴をあげるほどの恐怖はないけれど、物の見事に冷静さを取り戻してしまう。その気持ち悪さを見ないふりしてまで、その場の空気に酔うことが私はどうもできない。

花火大会なんて、まさにその好事例。私は人より蚊に刺されやすい体質なので、開始早々に落ち着き払い、超俯瞰的に花火大会の様子を眺めてしまう。

だけど、そこにいる山ほどのカップルたちは、夏の夜を彩る花火を眺めて、君の横顔きれいだとか、そういうことをやっているわけです。冷静になった私は、花火なんて何千発もいらないことに気づいてしまうし、ムードに頼ってるそこの人はもう、色んな段取りと月9のハイライトシーンで頭がいっぱいだろうな、とか考えてしまうし、ニヤついてしまうし、いけない。

そんな冷静な私でも、思いもよらぬところで、同じ偶然にでくわしたり、同じことに感動などしてしまったら、無防備にうろたえる。どんな口説き文句も、この脅威には勝てない。

きっと、そんなことでもあれば、フナムシも虫刺されも、黒くて気持ち悪いカニも全く気にならないんだろうなと、私はすっかり冷静に分析して、河川敷を後にした。


平常運転な私は、サカナ博士の友人に「旭川沿いのいかついサワガニが気になる」と聞いてみた。すると写真を見せずとも簡単に、やつらがクロベンケイガニだということが判明した。教えてもらったカニの紹介ページには「このカニを知っていたら達人級」とあり、友人が本当にサカナ博士だったのだなと気づく。食べるなら素揚げかな?と思ったけど、食用でもなかった。

その友人は、この週刊私自身の読者でもあり、次のタイトルには「クロベンケイガニという男臭いカニを揚げて食べたい。恋したい。」と勧められた。

平常運転な私は、それはちょっとださいな、と思った。

共感いただけましたら、シェアなどよろしくおねがいします。

香具師 Profile

きり

サウダーヂな夜スタッフ

ひょんなことから毎週日曜日「サウダーヂな夜」の昼営業にて働くことになりました。城下をぶらぶらする際には、ぜひ私の話し相手になってください。もしくは面白い本もあるのでふらりと読書に寄っていただけたら。

Other Articles

「週刊私自身」 New Articles

サウダーヂなTOPICS

close

Copyright saudade-ent.com | Developed by dak